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大人にも、子どもにも " ものがたり " が魂のミルク

今年の前半、練馬に『民話の研究会』(松谷みよ子さんなども所属)というのがあって、そこに参加したときに頼まれて会報に寄稿した文章ですが、加筆訂正して載せます。



【私 の 考 え る 昔 話】 ― 物語の力
                                       山本ひさの 

10年くらい前、わらべうたのことを調べていて、山形だったか、秋田だったか、
♪ あ~られ 五ん合、 ぼたん雪 一升、 空の婆ばたち 綿摘んで 落とせー ♪
というのをみつけました。

グリム童話 『 ホレおばさん 』 の中に出てくる、
「ホレおばさんが羽根ふとんを叩いたときの羽根が飛び散って下界の雪になる」
というイメージとそっくりだと思いました。

ドイツでは雪が降ると
「あ、またホレおばさんが羽根布団を叩いてる」
と言うそうです。

農漁村の貧困生活の中から生まれた暗いイメージが多い日本のわらべうたや民話ですが、このわらべうたはとても気に入りました。

日本のわらべうたとイギリスのナーサリーライム(マザーグースなど)、そしてグリムなどの昔話と日本の昔話。そこに共通する普遍性や、人生=生きることのArchetype(原型)というのが人間の自我の芯のようなものになると考えています。Archetype はときやところが変っても必ず人間としての属性となる何らかの真実というか、<人の根っこ>のような気もします。

私は、民話や昔話とは、このような<人の根っこ>のもととなる人間の暮らし方、人生に必ずやってくる喜怒哀楽、幸、不幸。それに立ち向かい乗り越える人間の姿勢、叡智を、物語の中に織りこみ、散りばめながら、次世代に伝えようとしているのだと思います。

                *     *     *     *      *      *      *

私は、小さな子ども園を運営しておりますが、子どもたちには、日々この思いで語りをしています。また、その親御さんにもなるべく子どもたちに徳のあるお話を中心に、リズムの繰り返しが心地よいものや、機転やユーモアに満ちたもの、言葉の美しいものなど、今後の人生のおみやげとなるようなお話をしてあげましょう。といつも呼びかけています。

鶴見俊輔さんはその著書 『神話的時間』 の中で、幼児期くらいまでの子どもの世界の時間の流れ方を、文字どおり<神話的時間>と称していて、大人になってからの時間のあり方と異なり、人類が辿った人間の精神の発展史と同じで、その初期の太古の人間が生きていた頃の時間が子どもには流れているというのです。(私の分野でもあるルドルフ・シュタイナーの教育観でも同じことが言われているのは興味深いです)。


<民話の会>、先日のゲストスピーカーの津田櫓冬さん(絵本画家)は、私の児童文学の指南役でもあり、同じ調布の住人ですが、彼はいつも口ぐせのように

「現代の子どもは、与えられるものが過剰で、掴み取るものが過少」

と唱えていらして、私も同感です。


子どもが生粋の子どもである子ども時代を、大人として守ってあげながらも、その子どもが大人になるときの魂の栄養としてのお話をたっぷりしてあげる。そこから子ども自身が生きる力を掴み取るようなお話。

私自身、齢50も超えますと、人生折り返し。自分のルーツ、幼少期に自分の感覚に染み付いた様々な思い出や、身体が憶えていることが愛おしく、そのさまざまな感覚が自然に蘇ります。

そして日々、子ども園の子どもたちを見ていると、子ども時代を豊かにしてくれるのが自然に根ざした原体験と身近な民話や昔話だという考えは、ますます確かになってきました。まさに太くて古い、神話的な時間。このような悠久の彼方からのような時間は民話や神話からしか味わえません。

イギリスのあるシュタイナー幼稚園で唄われているお話の歌を紹介します。


Motherearth the fairy-tale,
take me in your silver boat,
tell me so your fairy-tale,
take me to your golden land.  



大地の母さん=おとぎ話
銀色の舟で連れて行って
そしておとぎ話をきかせて
あなたの黄金の国へ行きたいの








山本ひさのプロフィール: ぎんのいずみ子ども園代表。
1998年渡英。イギリスにてシュタイナー幼児教育者養成コース、未就園児親子クラス指導者のためのコースで学ぶ。帰国後、2000年にぎんのいずみ子ども園を開園。健全な子育ちを促進する暮らし方、大人の生き方の実践を通して、生命力に溢れた創造的未来を模索している。手作りおもちゃ、ガーデニング、うたなど、親子ともに生活に潤いが持てるライフスタイルを提案しエッセイなども書く。日本シュタイナー幼児教育協会運営委員を2009年まで9年間歴任。





追記:
クレヨン・ハウス発行の
月間 『 クーヨン 』 8月号 - <もうこわくない子どものイヤイヤ>特集の取材を受けて、5~6歳の子どもの見方の部分を答えました。チャンスがありましたら、ご覧になってみてください。

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by nijiiro-no-tane | 2011-08-27 17:58 | Comments(0)